それはまるで赤子のように

目の前にある愛情をがむしゃらに欲する









はらはらと落ちる白い粉のようなモノ
開け放された窓から顔を覗かせ、その白いモノを映す。
雲の遥か上から落ちてくるソレは俺の手に乗りすっと消えていった。
ぺろりと白を吸収した箇所を舌でなぞれば無味。
味なんてあるはずもなく、自分の手を舐めたという事実だけが残る。


「今日は冷えますねぇ、旦那。」


くるりと外に向けていた身体を反転させればそこには布団に身体を預ける白い男。
俺よりもでかい身体のくせに色は真っ白で、髪の色と羽織っているものを合わせても
全てに置いてこの男は真っ白だった。



「まぁ、冬だし、夜だし?ってかお前寒くないの。そんな窓際に立って。」



なんともまぁ当たり前な返答をしつつ、男は肌蹴ていた合わせ目を引き寄せた。
寒ィなんてでかい身体を縮めるように丸め、乱れていた布団を肩までかける。
ソレを見て俺は開けていた窓を閉めてやった。
優しい男だ俺は、なんて自画自賛しながら旦那が寝ている布団まで近寄る。



「そっち、つめてくだせぇ。」

「うわっ、お前冷たっ。」



さっきまで窓際にいた俺の身体は冷えきっていたようで
体温の下がった身体に触れた途端、目の前の男は顔を歪めた。
決して大きくもない布団に大の男が2人で潜る様は誰が見たって疑問に思うだろう。
俺は冷え切った身体をこれでもかというほどに旦那に近づけた。



「冷てっ!お前、わざとやってんのかー?」

「・・・・・・」

「あれ?シカト?さっきまであんなに愛し合った仲なのにさぁ。銀さん悲しー。」

「煩いでさぁ。」



嫌がらせの意味を込めて俺の身体を旦那にくっつけた。
ぎゃー、なんて汚い悲鳴が聞こえたが知るか。
愛し合った、なんてよく言える。


「何?何々?甘えんぼさん?」

「・・・旦那ぁ」

「ん?」



ゆっくりと慣れた手つきで俺の頭を撫でる大きな手。
まるで赤子をあやすような手つきに俺は毎回イライラと、少しの安心を覚える。
旦那の体温と俺の体温が溶け合い、甘い匂いが鼻を掠めた。


「旦那は俺の事が好きですかぃ?」

「おー、好きだよー。」


俺と、あんたの好きは同じようで全くの別モン。
それに気づいたのは、いや、最初から知っていたんだ。



「そうですかぃ。俺は・・・」



愛してまさぁ。



例え何回も繰り返しているこの行為が
お金で繋がったこの関係が、本物の愛情ではないと解っていても。

それでも
俺はあんたを買うことを止められないんだ。